翠(みどり)皮フ科・アレルギー科

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尋常性乾癬について

◎尋常性乾癬の病気の原因などが解明されつつあり、治療も進歩しています。
 尋常性乾癬は、皮膚が炎症を起こし、うろこのように皮がボロボロむけてしまう病気です。炎症が起きることによって皮膚の生まれ変わりの周期が早くなってしまうためです。特定の原因を突き止めることは、現在の医学でも難しい状況ですが、病気の体の中で何が起きているのかということがかなり分かってきています。そのことによって治療にも大きな進歩が見られています。お肌に現れる症状は似ているけれども、体の中でおきていることはもしかしたらいろんなタイプがあって、それを尋常性乾癬と呼んでいるのではないかと最近では考えておられる専門家もいます。

◎尋常性乾癬は皮膚の生まれ変わりが早くなってしまうことで起きてしまいます。
 私たちの皮膚は、45日くらいの周期で生まれ変わっています。しかし尋常性乾癬の方の炎症を起こしている部分の皮膚は、3日~7日という短い期間で生まれ変わってしまうため、皮膚がボロボロとむけてきてしまいます。頭に病気が出てくればフケのようになってしまいますし、また体の肌がボロボロしてしまえば温泉などでお肌を出すことに抵抗を感じてしまったり生活の質がかなり下がってしまいます。また炎症の程度がひどくなると、皮膚に膿をもってしまい、膿疱性乾癬という重い病気になってしまうこともあります。

◎尋常性乾癬は皮膚だけの病気でなく、全身の病気です。
 尋常性乾癬は皮膚症状だけではありません。関節症性乾癬といって、リウマチのような関節破壊、そして変形をすることもあります(厳密にはリウマチとはきちんと区別されています)。著しい生活の質の低下をきたすこともあります。血管に炎症を起こしていることもあり、それが動脈硬化などに起因していることもあります。また関節だけでなくアキレス腱などの腱にも炎症をきたすこともあります。眼科領域では乾癬による虹彩炎も起こりえます。
 このように考えますと尋常性乾癬は、皮膚の病気だけでなく、全身の病気であるという認識がとても重要になってきます。しかしながら私も含めた皮膚科医もつい目に見える皮膚症状だけに注目してしまうことが多いです。これに関しては反省すべきところであると考えます。

◎尋常性乾癬は、人種差や地理的条件で差があります。
 尋常性乾癬という病気は、夏場より冬場の方が症状がひどい方が多くなります。また緯度が高くなるほど患者数が多くなり、私たち日本人よりも欧米人の方が患者数は多くなっています。しかし日本人でも患者数は多くなっています。ただ緯度の高いところで生活しているイヌイットには尋常性乾癬の患者さんはいないといわれています。

◎紫外線を当てることで、症状を緩和できることもあります。
 冬場より夏場、緯度が赤道に近いほど症状が軽いということは、紫外線が尋常性乾癬の病気の勢いを抑えるということを示唆するものです。翠皮フ科・アレルギー科ではできませんが、紫外線を当てることで尋常性乾癬を治療することもございます。今は、ナローバンドUVB(Narrow Band UltraViolet B:NB-UVB)という非常に狭い波長だけを取り出した特殊な紫外線を当てることで治療効果を得られるようになっています。安全性もある程度は確保されています。

◎人種差は食生活の影響が強く示唆されています。生活習慣病との関連性も注意が必要です。
 欧米人は、100人に1人以上の割合で尋常性乾癬の患者さんがいるといわれています。また日本でも患者数が増えているということで、欧米の食生活が病気に大きな影響を与えているとされています。イヌイットは高緯度に住んでいながら、尋常性乾癬の患者さんがいないのは、イヌイットがDHAやEPAなどのω-3不飽和脂肪酸を摂取して血液中の脂質低下がもたらされることによるのではないかといわれています。脂質に関する病気である心筋梗塞などもとても少ないことも知られています。実際尋常性乾癬の患者さんは、循環器系の病気の発症リスクは健常人と比較して格段に高いことも知られています。

◎まずは塗り薬からの治療で、効果に応じて内服薬や紫外線を追加していきます。
 尋常性乾癬を治療していくにあたり、今はさきほど申し上げた紫外線以外にもいろいろな治療法があります。
 一般的には塗り薬からはじめていきますが、これにも炎症を抑えるステロイドだけでなく、皮膚の生まれ変わりを正常に近づけるように働かせるビタミンDの塗り薬もあります。
 飲み薬も、炎症を抑えていくために免疫を調整してあげるためのものや、皮膚の生まれ変わりを正常に近づけるように働かせるビタミンA誘導体などがあります。ただこの2つの飲み薬の併用は、肝機能に異常が出てしまうことが多くなるのでお勧めはしません。単独で飲んでも血液検査をしながらのフォローアップは必要になりますし、ビタミンA誘導体を飲み始めると長期間にわたる避妊をしなければいけないなどいろいろな制約も多少はありますので、できることならこの2つの飲み薬を使わずに治療ができたらよいと考えています。どうしても必要な人がいるのも事実なので、これらのお薬の功罪をきちんと評価や納得をしていただくことがとても重要です

◎乾癬は刺激を与えると症状が出現します。
 乾癬は、ケブネル現象といって、皮膚に刺激をあたえると正常部分にも皮疹が出現することが分かっています。かゆいからと言って掻いてしまったり、肌の皮がどんどん剥けてくるからといってお風呂でゴシゴシ擦ったりすることによって皮膚の症状は間違いなく悪化いたします。お肌にできるだけ刺激を与えずにすごす工夫もお願いいたします。

◎漢方薬+食生活の改善で絶大な効果を発揮することがあります。
 同じ飲み薬でも漢方薬も効果がある人はいます。100%の患者さんに効果を出すとは思いませんが、効果がある人はいます。
 生活を見直すこともとても大切であり、特に食生活を見直すことが一番大切です。お肉を摂取せず、脂っぽい食事から和食でも特にさっぱりしたものに切り替えるだけで、尋常性乾癬が出現しなくなった人もいます。ほかには、玄米をやめて白米にした方や、サプリメントの摂取を控えただけでかなり改善して薬がほとんどいらなくなった方もおられます。一般的に健康に良いと思われているものでも、実は病気の原因だったということもありえるということです。食生活の改善+漢方薬だけでもかなりの効果が得られる人も多いです。

◎注射の薬を使うことで、今まで以上の効果が期待できます。
 いままでの治療で、どうしても効果が得られにくいという患者さんがいるのも残念なことですが、事実でもあります。そのような患者さんには、TNF-αという細胞から出ている物質を抑えこんでしまうことによって尋常性乾癬を治療することもできます。このお薬は、関節リウマチやクローン病という腸の病気などでも使われているお薬です。尋常性乾癬は先ほど述べたように関節炎を一緒に起こしてしまう方がいます。関節炎は関節の破壊を進めてしまうため、早めに治療をしていくことがとても大切になってきます。膿疱性乾癬のなかでも他の治療の効果がない患者さんにも用いられます。
 あくまでも私見ですが、関節や胃腸、皮膚などに出てくる病気でも治療薬が同じというのはとても興味深いことであります。その方の遺伝子や生活様式によって、病気の本質は同じことでも病気の現れる臓器が異なってきているのかもしれません。今後の研究に期待されるところです。
 注射の薬には、結核にかかりやすくなったり、他の感染症に対しても注意をしなければなりません。そのような観点から、注射の薬を現時点で使用できる施設は限られてきています。現状では翠皮フ科・アレルギー科では乾癬に対する注射の治療を開始することができません。ただし注射の薬のご相談や実施している施設の紹介に関してはお受けできます。うまくコントロールできるようになれば定期的なフォローは翠皮フ科・アレルギー科で実施して、結核などの感染症の定期的なチェックに関しては導入した医療機関で実施していくことも可能です。診察時におっしゃってください。

◎注射の薬にもいくつかの方法があります。
 注射の薬では、皮膚に注射するもの、血管に注射するものがあり、そして注射の間隔も変わってきます。3か月に1回の間隔で皮膚に注射するものと2週に1回の間隔で皮膚に注射するもの、8週に1回血管に注射するものがあります。医療費はかなり高くなってしまうのが難点です。2週に1回の間隔の注射は自分でも自己注射をすることができます。2週で効果が切れてしまうので、いろいろと微調整がしやすいという利点もありますが、いろいろと欠点もあります。これは他の薬剤にも言えることです。もし必要があれば診察時に説明いたしますので、遠慮なくおっしゃってください。

◎長く付き合っていかなければいけない病気かもしれませんが、諦めず治療をしていくことが大切です。
 紫外線と最後の注射のお薬の導入以外は、翠皮フ科・アレルギー科でも治療ができます。尋常性乾癬は、とても長く付き合っていかなければいけないことが多いですが、あきらめることなく、まずは食生活などの生活習慣を見直してみることをお勧めいたします。また漢方薬がその治療の手助けができ、塗り薬もお役に立てるようになれば幸いです。悩んでいる患者さん同士が病気や治療について正しい知識をもち、お互いに知り合って悩みを共有し治療意欲を高めたりするための日本乾癬患者連合会(JPA)というものがあります。これは全国にある乾癬患者会が集まって組織されたものです。東京にはNPO法人東京乾癬の会P-PATがあります。前述の注射の薬は、患者さんたちが署名運動をして厚生労働省に訴えたことが医療承認を早く受けられるようになるきっかけになりました。

 もしよろしければ一度ご相談ください。

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