翠(みどり)皮フ科・アレルギー科

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傷の治療について

◎数十年前とは治療方法が全然違います。
 傷の治療は、私たちが子供のころ行っていた治療と現在では、方法がかなりことなります。それは医学の進歩があったことは間違いないと思います。昔の治療法が、現在の理論とはかなりかけ離れてしまっているものもありますが、それを絶対に間違っていたとは言いきれません。なぜなら以前の治療方法で治療を行ってきても問題がないことも多かったからです。現在の治療と以前の治療の目的で決定的に違うのは、「傷を早くかつきれいに治療する」という観点があるかないかです。傷をきれいにするためには現在の治療方法がよいと思います。そして、処置をするときもあまり痛くないのでお勧めしたいと考えています。

◎以前は傷は乾かして治療しましたが、現在は乾かしてはいけません。
 学校の校庭で転んで、膝をすりむいたりしたときに、以前は乾かして瘡蓋(かさぶた)を作って早く直しましょうと言われていたと思います。乾かすために、以前は開放して早く乾燥させ瘡蓋を作っていました。ただそれだけだと液が滲み出てきて、そういう場合には傷口には乾いたガーゼを貼ったことはありませんか。そしてお風呂に入るときに、乾ききった滲み出た液体で傷口からはがすときに痛い思いを経験したことがある人もおられると思います。傷口をガーゼなどで覆うことをドレッシング(dressing )と言います。乾いたガーゼなどで覆うことを乾燥ドレッシング(dry dressing)と言います。それに対して、傷口に軟膏をたっぷりつけてガーゼで覆ったり、または傷口を保護する素材を用いて貼り付ける治療を、湿潤ドレッシング(wet dressing)と言います。傷口をハイドロコロイドなどの創傷被覆材という保護するものなどで完全に覆ってしまうことを、閉鎖密閉療法(ODT:occlusive dressing therapy)と言います。乾燥ドレッシングは、絶対に使用しないということではなく、出血が止まらない傷口などに乾いたガーゼで圧迫固定するときなどには現在でも用いられています。傷を早くかつ綺麗に治療をするときには湿潤ドレッシングが用いられています。

◎消毒するより水道水で洗浄しましょう。
 以前は傷ができると、水道水で洗ってヨードチンキやマーキュロクロム液(通称赤チン)、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムなどの消毒薬を塗って傷口を処置していました。これらは感染予防には効果がありますが、傷口の再生しようとする細胞に対しても強い傷害性をもち傷口の治癒を妨げてしまいます。水道水で十分に洗うことができるのであれば、たくさんの流水で傷口を洗い流してください。また異物などが入っている場合は、できるかぎり取り除いてください。たくさんの水で洗浄ができないときには、消毒薬も役に立つかもしれませんが、消毒をするのも最初の1回のみで、何回もすると傷の治りが遅くなるだけでなく、きれいに治療することの妨げにもなります。皮膚や傷口の細菌をゼロにすることは不可能ですが、たくさんのお水を使った洗浄によって物理的に少なくすることは可能です。これは消毒よりも効果的と考えられています。消毒よりも洗浄と覚えてください。

◎湿潤ドレッシングはガーゼに軟膏がお勧めです。
 湿潤ドレッシングでは、方法がいくつかあります。一番簡単なのは、軟膏を傷口に覆うように塗ってガーゼを上に被せてテープで固定する方法です。後述致しますが、これが安全でかつ費用対効果の面でもよいと考えます。他にはハイドロコロイドなどの滲出液を乾燥しない程度に適度に吸って湿潤環境を保つような創傷被覆材を傷口に直接貼る方法や、ご家庭で使用しているラップを傷口に張り付けて常に湿潤環境を作る方法(いわゆるラップ療法)があります。
 ハイドロコロイドなどの創傷被覆材は、とても効果的で素晴らしいものだと思います。入院患者さんの褥瘡などの処置ではかなり役に立っております。市販品でも、最初は靴擦れ防止のための貼付剤として未滅菌のものが販売されていましたが、現在では傷用にもきちんと販売されています。ただし少しお値段がかかります。ラップ療法が、ご家庭でできる治療としては安いかも知れませんが、ラップを傷口に覆ってもそこから漏れ出る滲出液を吸うためのガーゼなどが必要になります。ラップは密閉性が高いために、滲出液がたまってしまうと後述するように危険なこともあります。
 創傷被覆材による治療法もラップ療法による治療法も、絶対に行ってはいけない条件があります。それは傷口が感染している場合です。傷口が感染を起こしていると創傷被覆材と傷口の間の滲出液やラップと傷口の間の滲出液が細菌を増やす培地の役割を果たしてさらに感染がひどくなってしまいます。ご家庭で行ったラップ療法で不適切な処置をした中学生で、感染した傷口から全身に菌が回って高熱を出し、体の皮膚の至る所に膿がたまってしまいその膿を切開して排膿しなければいけなくなった症例を経験したこともあります。
 創傷被覆材による治療法もラップ療法による治療法も決して悪い治療法ではありません。しかし選んで実施しないとより大きな副作用が起きてしまうことが多いと考えます。傷口が感染していないと確信できる状況のみこれらの治療法が適応されるべきだと私は考えています。また最初は感染を起こしていなくても、あとからジュクジュクしてきたりこれは違うなと思った時は、迷わず中止することをお勧め致します。
 私たちでも感染を起こしているかどうか悩む場合はあります。一般の方ではなおさらのことではないでしょうか。悩んで治療を行うくらいならシンプルに軟膏を塗ってガーゼで覆う治療が簡単です。基本的にそれを行ったからといって感染を助長することはありません。抗生物質の軟膏は、感染防止には寄与するかもしれませんが、感染そのものを抑える効果は低いと考えられます。感染をおこしてしまっている時には、抗生物質の内服をしなければいけません。さらにひどいときには点滴をします。
 湿潤ドレッシングは、感染があるかどうかで使い分けをしなければいけません。感染を見分けることが難しい時には、軟膏処置をしてガーゼで覆うことをお勧めいたします。

◎湿潤ドレッシングの時の軟膏は多めにしましょう。
 湿潤環境をつくることによって、皮膚の再生が早くなり傷跡もきれいに治療できることが示されています。翠皮フ科・アレルギー科では、軟膏を多めに外用することを勧めています。理由は2つあります。まずは湿潤環境をきちんと保てるようにすることです。もうひとつは、ガーゼを取り除くときに傷口とくっつかないようにするためです。その方が痛みをともなうことなく処置できます。私が塗り方でお勧めしているのは、ケーキのスポンジの上に生クリームを塗るくらいのつもりでたっぷり塗ってくださいと説明しています。傷口が軟膏で覆われて見えなくなるくらいに覆うことがコツです。厚さは数ミリメートルをお勧めしています。

◎ガーゼ処置の時は毎日交換しましょう。
 ガーゼで処置をするときには、お風呂に入る前にガーゼを取り除き、シャワーでよく洗い流してください。傷口の上に石けんやシャンプーの泡がついても全く問題ありません。それよりはきちんと洗い流して細菌の数を減らすことの方が重要です。入浴後は再度軟膏を塗ってガーゼで処置をしてください。汚れさえしなければ1日1回の交換で十分と考えます。
 創傷被覆材の交換は滲出液の状態に寄りますが、数日に1回の交換でよいとされています。滲出液が多い場合は早めの交換が必要です。また感染を疑う時には速やかに中止をすることが大切です。ラップ療法も軟膏を塗ってガーゼで覆う方法と同様に毎日をお勧めします。個人的には、同じ毎日なら軟膏処置をしてガーゼの方がよいのではと考えています。

◎傷にあった適材適所の治療を選択することが重要です。
 どんな治療法にも長所と短所はございます。それをきちんと理解した上で、安全でかつきれいに治療できる方法を選択するべきだと考えています。ただしすべてを理解することが難しい時には、まずは水道水でよく洗い流し、異物があれば取り除いた上で、1日1回の軟膏を塗ってガーゼを覆う処置をお勧めします。

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