翠(みどり)皮フ科・アレルギー科

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アレルギー検査について

・特定のアレルゲンの血液検査は、即時型アレルギーのみを反映し、他のアレルギーには反映されません。また即時型アレルギーに関しても参考程度であり、確定診断はできません。

◎アレルギー検査のタイプについては2つに分けられます。
 アレルギー検査は、大きく分けて2つあります。アレルギーが何によって起こされているのか調べる検査と、体の中でどのような経路でアレルギーが起こされるのかを調べる検査です。何によって起こされているかを調べる検査で一番確実なものは、アレルギーが起きた状況と同じことを再現して、アレルギーが誘発されるか確かめることです。ただしこれには危険を伴い、最悪の場合命を落とすこともありえます。

◎アレルギーが何によって起こされているのか調べる検査を示します。
1.血液検査
2.パッチテスト
3.プリックテスト
4.皮内注射テスト
5.内服テスト(チャレンジテスト)

 アレルギーが何によって起こされているのか調べる代表的な検査をあげましたが、信頼性は、1から5にかけて徐々に高くなっていきます。つまりここの中では血液検査より内服テストのほうが信頼性は高いということになります。パッチテスト、プリックテスト、皮内注射テスト、内服テストは実際にアレルギーを起こすかどうかを皮膚や全身で再現するものです。しかしながらアレルギーがない人でもテストによって新しいアレルギーを誘発してしまうこともゼロではありません。またアレルギーがある人の経過を追っていくときにこれらの検査を行いますが、検査によってアレルギー反応を強くして、逆にアレルギーを長引かせる可能性も否定できません。

◎特定のアレルゲンに対する血液検査は参考程度にお考え下さい。
 血液検査は採血を行い、血液中に特定の食品や花粉などのアレルゲンに反応するIgEと呼ばれるアレルギーを起こす物質が反応するかどうかを調べていく検査(特異的IgE)です。それとは別に、不特定のIgEの合計を調べる検査(非特異的IgE)もあります。特異的IgEは、卵と牛乳、ピーナッツや小麦の一部たんぱく質など以外の検査において、以前に比べるとかなり改善はしていますが信頼性はあまり高くありません。つまり採血で反応しなくてもある物質にアレルギーであることはありえますし、反応してもアレルギーであることの絶対的な証拠にもなりません。血液検査で反応しても(感作されていても)、アレルギーを起こさない人もたくさんいます。これは診断をする上であくまでも参考指標になるというだけのことであって、確定診断には使用できないということです。特異的IgEの検査だけを鵜呑みにして厳格な食事制限を始めることはお勧めいたしせん。結論からいうと採血だけで特定のアレルギーはわからないというのが現実です。翠皮フ科・アレルギー科では、特定のアレルギーに対する検査は積極的には実施していません。実際検査してもしなくてもほとんどの場合は治療法は変わりません。もちろん必要と思われる時には実施しています。IgE以外にもアレルギーを起こす原因はたくさんあります。IgEによって起こされるアレルギーは即時型アレルギー(I型アレルギー)と言われるものであり、他のタイプのアレルギーでの関与は少ないとされています。つまり特異的IgEが高くないということは、そのものの即時型アレルギーの関与は少ないと言うことだけで、残念ながらアレルギーそのものを否定したことにはなりません。検査した食品でも、一部分には反応していないだけかも知れません。あくまでも参考程度にとどめていたほうがよろしいと考えます。先ほど書いた通り積極的には実施していませんが、参考程度でもいいのでどうしても調べたいという場合は、翠皮フ科・アレルギー科では特異的IgEの採血検査を行っています。どのような種類が調べられるかについては、こちらを参考にしてください。ただしこの結果は本当に有用なものであるかはなんとも言えません。費用対効果ではあまり意味はなさないように思います。ちなみにどうしても実施してほしいと言われた患者さんが2020年には5人おりました。そのうちお一人は、バラ科の果物のアレルギーが問診で容易に診断ができ、必要ないと考えましたが、バラ科の果物の検査を希望されました。残り4人は特に特定できるものはありませんが、本人の希望の通り採血検査を実施しました。5人全員で採血結果は全て陰性でした。陽性反応がでると思ったバラ科のアレルギーすらも全く反応しませんでした。
 あらかじめアレルギーの原因が特定されていて、その特異的IgEが高いときに、定期的に検査をすることで特定物質の即時型アレルギーの反応の程度が推測できるのでそういう意味では採血検査は利用できると考えます。ただし特定されているのにその特異的IgEが反応していない場合は指標として利用できませんので、採血をする意義はないと思います。

◎非特異的IgEは全体的な外因性の即時型アレルギー体質の傾向を見る検査です。外因性アトピー性皮膚炎の評価では TARCがお勧めです。
 非特異的IgEは、IgEの総量をみるものであり、全体として外からの物質が原因でおきる(外因性)即時型アレルギーの傾向があるのかどうなのかという意味においては参考になります。外因性即時型アレルギー体質の人はIgEが高くなっていることが多いです。アレルギーがIgEを介して起きているものなのかどうなのかを判断する(つまり体の中でどのような経路でアレルギーが起こされるのかを調べる検査)にも良いと考えます。アレルギーでの血液検査を勧める時には、非特異的IgEと血液の中の好酸球という白血球の一部の数を調べることをお勧めしています。 一時期はアトピー性皮膚炎などで、IgEの総量が治療の効果を見るのによいとされていましたが、実際はあまり参考になりません。あくまでもアレルギー体質の傾向をみることが主体だとお考えください。もちろん下がってきていれば、全般的にアレルギー体質の改善につながっていることが示唆されます。しかしアトピー性皮膚炎の治療効果を必ずしも反映しません。外因性アトピー性皮膚炎の場合、今は後述するTARCという指標が参考にできます。
 現在の医学的な検査ですべてのアレルギーが解明できているわけでもありませんが、アレルギーを起こす物質がよくわからない時には簡単な検査でアレルギーがどのような経路によって起きているのかを次のシンプルな表で考えるのが妥当ではないかと考えています。外からの物質が原因でアレルギーがおきるもの(外因性)と体内の状態が原因でアレルギーが起きるもの(内因性)がどう関わっているのかを検査することは良いと考えています。内因性はIgEとは関係ない金属アレルギーやストレスとの関連もある可能性があります。これによって治療戦略をうまく考えていける場合があります。特に内因性のものは、治療が難しいことが考えられています。外因性はもちろんですが、治療の難しい内因性も漢方薬を組み合わせていくことで治療効果を高めていけるのではないかと考えています。

検査項目 外因性即時型(I型)
アレルギー
外因性即時型に続く
遅延型アレルギー
内因性および
外因性との混合
IgE ↑
好酸球↑
関与が高い 関与が高い 可能性あり
IgE ↑
好酸球↓
関与が高い 関与が低い 可能性あり
IgE ↓
好酸球↑
関与が低い 関与が高い 可能性あり
IgE ↓
好酸球↓
関与が低い 関与が低い 関与が高い

 まずは、治療を行っていただき、それでも効果が出ないときには採血検査をするのが良いのではと考えています。特に小さいお子さんにはその方が精神的な負荷がかからなくてよろしいのではないでしょうか。ご希望の方は遠慮なくおっしゃってください。

◎検査の精度が高くなると危険度も少々高くなってきます。
 パッチテスト、プリックテスト、皮内注射テストは、皮膚に直接アレルゲンと考えられそうなものを接触させることによる皮膚の反応を実際に観察するものです。内服のお薬でアレルギーなどが起きた時に、飲むのは危険だと考えられた場合に行ったりする場合もあります。また普段仕事場などで使用している物質が原因でかぶれたりしているのかを確かめたりするときにも使います。オープンパッチテストはアレルギーの原因と思われる物質を30分間皮膚に直接当てて反応を見る検査です。即時型アレルギーの反応をみるとても簡便にできる検査です。それで反応がないときには、プリックテストを行います。プリックテストは、皮膚に針でほんの少しだけ傷をつけて、アレルギーの原因と思われる物質が皮膚に浸透しやすくして30分後に反応を見ます。皮内注射テストはアレルギーの原因と思われる物質を皮内に注射して、5分から30分の間での反応を見ます。内服テストは、内服薬などで副作用がおきたりアレルギー反応がおきたときに、もう一度お薬を飲んで本当にアレルギーが再現されるかを試すテストです。アレルギーを再現させるので、これが一番確実な検査法です。ショックを起こした可能性があるお薬や食品を試す場合は、重篤な反応がでると危ないので、オープンパッチテストでも入院をさせて行います。ショックを起こしたことがない場合は、プリックテストまではショックを起こす危険性が少ないので、アレルギーがひどくなったときの対処準備をした上で外来でも実施できます。翠皮フ科・アレルギー科では、アレルギーの原因と思われる物質をご持参いただければ、オープンパッチテストやプリックテストは実施いたします。実施するにあたり危険性についても再度説明を致しますので、実施は2回目以降でご予約をとっていただいた上で検査致します。
 クローズドパッチテストは遅延型アレルギーを検査するテストです。長時間接触させるため、アレルギーを起こす原因でなくても赤くなって陽性になったりすることがありますが(偽陽性)、血液検査では判別できない遅延型アレルギーに対してより確実な診断を下すことができます。原因となる物質を背中や腕に貼り付けて、48時間そのままにします。その後剥がして、まず15分後に判定します。最初の判定から24時間後(貼ってから72時間後)も判定致します。可能であれば貼ってから1週後にも判定を行います。クローズドパッチテストは、翠皮フ科・アレルギー科でも実施いたします。月曜日の午後診察前に貼り付けて水曜日の午後に1回目、木曜日午後に2回目の判定、その次の月曜日午後に3回目の判定というコースで検査致します。アレルギーの原因と思われる物質を持参いただければ実施致します。
 しかしながらこれらの検査はアレルギーがない人でもテストによって新しいアレルギーを誘発してしまうこともゼロではありません。またアレルギーがある人の経過を追っていくときにこれらの検査を行いますが、検査によってアレルギー反応を強くして、逆にアレルギーを長引かせる可能性も否定できません。アレルギー反応をおこしたところが跡になってしまうこともありますので、良く考えて検査を実施することが重要です。
 金属アレルギーに関する検査は、クローズドパッチテストで行います。翠皮フ科・アレルギーでは金属アレルギーの検査は実施していません。大学病院などで実施しているところが多いですので、ご紹介を致します。

◎むやみに検査するのではなく、疑わしいときに検査をするべきです。
 アメリカのNational Institute of Allergy and Infectious Diseases(NIAID)という国立施設から食物アレルギーのガイドライン(JW Pediatr Adolesc Med Jan 19 2011)が出ました。今までの検査は過剰であり、慎重な検査の重要性が謳われています。
 IgEによって起きる即時型食物アレルギー(アナフィラキシー、蕁麻疹など)や、好酸球性食道炎やお薬などで管理できない湿疹などで食物アレルギーに合致する病歴がある患者にのみ実施すべきであるとされています。その理由に、皮膚プリックテストと採血によるアレルゲン特異的IgE検査は、陽性として予測することが困難なことが多いからです。
 IgEによって起きる即時型食物アレルギーの場合は、2時間以内に起きる再現性のある症状に対して検査がなされるべきだと記してあります。
 一度に検査できる特異的IgE検査の項目は13種類までですが、やみくもに13種類を調べていくのではなく、日常生活の中で経験的に怪しいと思われるものを検査するべきであると考えております。
 これらの検査に関する指針は食物アレルギーだけではなく、すべてのアレルギー検査について普遍的に考えられるものです。どのような種類が調べられるかについては、こちらを参考にしてください。
 私が他に注目しているのは、お薬などで管理できない湿疹などの中には、皮膚についている細菌やカビ(真菌)が原因になっていることも考えています。健康な方でも皮膚にいる黄色ブドウ球菌などの細菌、カンジダやマラセチアなどのカビ(真菌)がアレルギー反応を起こしている可能性です。即時型アレルギーでも、常に起きているために慢性のアレルギー症状の様に見えているのではないかと考えています。黄色ブドウ球菌が出す毒素やカンジダ、マラセチアに対する即時型アレルギー反応を調べることも視野に入れて検査を検討すべきだと考えています。

◎特異的IgE検査の結果でアレルギーを判断することはできません。
 前述したとおり、特定の物質以外の採血によるアレルギー検査の精度は高くありません。保育園などで何に対して血液検査で調べてもらうように言われることがありますが、これだけで判断をするのはとても危険です。卵や牛乳も含めてアレルギーを起こす物質が、検査で反応しないことは日常的に起こっています。逆にアレルギーとはまったく関係ないものが反応することも良くあります。つまり血液検査で診断(判断)することはできないのです。血液検査だけで判断をして、危険な目にあうこともあれば、逆に日常生活の不必要な制限を強いることにもなりかねません。子供は注射をとても嫌がります。治療でうまくいっているときに無理に押さえつけてまで血液検査をする意義はとても少ないと思われます。それよりは後述する日記の方がとても確実です。

◎症状日記をつけていただくことがとても有効です。
 食品のアレルギー検査について言えることは、前に述べたとおり血液検査よりも実際に摂取をして悪化しているかどうかを確かめる方が確実なことがいえます。私たちは毎日食事として食品を口から摂取いたします。つまり毎日内服テストを行っているのと同じことがいえるのです。これで日記をつけていけば、間違いなく血液検査よりも確実な検査結果が得られます。ご自身やご家族が作ったアレルギーに対するカルテになるわけです。即時型アレルギーでなければ、摂取してすぐ起きるアレルギーでないものもありますので、数日前に摂取した食品も考慮して判定を行わないといけないと考えます。これを繰り返していけば、どの食品で症状が悪化したかを探究していくことができることが多いです。逆に食品の関与を否定することもできる場合も十分にできます。
 お子さんが、アレルギーで悩んでいる方は、是非とも症状と行動、食品名などを記した日記をつけることをお勧めいたします

 アレルギーが何によって起こされているのか調べる検査では、血液検査よりもご両親の目の方が確実に病状を把握できます。

◎ショック症状が出た食べ物は食べないでください。
 摂取をすると吐き気がしたり、血圧が下がってしまったりショック症状がでるものを、再度食べたりして病院以外で確かめることはしてはいけません。とても危険です。そういう場合は、血液検査など他の検査から始めた方がよろしいと思います。そういうときには精度は低くても安全な検査から行っていくのが良いと思います。

◎アレルギー体質は変化していきます。
 アレルギー体質ですが、一度アレルギーになったら治らないということではないと思います。それは急に花粉症などのアレルギーが出る人もいれば、食物アレルギーなど徐々に改善していく方もおられることから「アレルギーの体質は変わる」と言えるのではないでしょうか。状況は変えることができる可能性があると思っていますが、そのためにはまずは時間をかけてでも体調を整えていくことがとても大切なのだと感じています。あきらめないで根気強く治療を行っていきましょう。
 食物アレルギーは、食物が口から入っておこることよりも、皮膚に触れて感作を受けることでおこることが多いと考えられるようになっています。つまり皮膚をきちんとしておかないと、バリアが破壊されてアレルギー体質になりやすいとされています。まずは皮膚の状態と胃腸の調子を両方整えていきましょう。

◎外因性アトピー性皮膚炎はTARCを調べることで、症状の程度が分かります。
 外因性アトピー性皮膚炎の病状を調べる上で、血液検査で示すことができたら患者さんにもわかりやすいと以前から考えられていました。以前はIgE RISTで総IgE量の変動を見ることで、アトピー性皮膚炎の状態を数値である程度表現していました。しかしIgEは、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギーの病気でも上昇してしまいます。総IgE量は、現在のアレルギーの全体の状態として判断をするのには、参考になると思います(しかしIgEとは関係ないアレルギーも存在するのであくまでも参考です)。外因性アトピー性皮膚炎だけの状態を数字で判断するのに、現在はTARCという項目が使用されています。この数字を定期的に計測することで、外因性アトピー性皮膚炎の状態がある程度把握することができるようになりました。実際私たち皮膚科医はTARCを計測しなくてもお肌を見れば改善しているか分かるのでほとんど計測しません。しかしながらアトピー性皮膚炎の状態を数字で理解して良くなっていることを確認したいと言う方には良いのではと考えています。ご希望の方はおっしゃってください。

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