◎花粉は目や鼻だけでなく皮膚も悪化させます。
鼻水が出てこないで喉の方に後ろから垂れてしまうと喉の違和感やいがらっぽさを出す原因にもなります。それが喉頭を刺激すると咳もでてきます。花粉が皮膚につくと皮膚がかぶれて赤くなってしまう方もいます。顔の特に頬やまぶたに多く見られます。まぶたは目がかゆくて擦ってしまうのでさらに皮膚の症状を悪化させてしまうこともあります。春先になると
アトピー性皮膚炎などの慢性の皮膚の病気が悪化することがあります。これは花粉によるアレルギー症状の悪化も一つの原因です。
◎花粉だけではなく、大陸から飛散する黄砂も悪化の原因になっています。
春の花粉はスギやヒノキなどのものですが、これらは遠い山林から風に乗って運ばれてきます。樹木の高さが大きいために遠くから飛散してきます。これに対し秋の花粉は、ブタクサやヨモギなど雑草系が多く、河川敷に自生しています。高さもそれほどでもなく、飛散距離は長くても数百メートルと言われています。春は全体的に影響を及ぼしますが、秋は場所が限られてきます。
近年は、春になると大陸からの黄砂が多く飛んでくるようになりました。黄砂は、大陸からの汚れた空気をくっつけて飛散してきますので、鼻炎だけでなく、皮膚炎の大きな症状を起こすこともあります。近年の春先の皮膚症状の増加は、花粉だけでなく黄砂との相乗効果で悪化させてしまっている可能性が強く示唆されています。
◎薬物療法で改善しない鼻炎は耳鼻科で精査をしましょう。
鼻炎が通年性である場合は、ダニやほこりなどの一年中通しての日常生活の中にアレルギー物質がある場合やが多いです。薬物治療を行って効果に乏しい場合は、慢性副鼻腔炎の可能性もありますので、耳鼻科の受診をお勧めいたします。
◎どの花粉に対してアレルギーがあるかの血液検査は、参考程度とお考えください。
どの花粉にアレルギーがあるかどうかは、採血をして
アレルギー検査をしても確定診断には至りません。あくまでも参考程度です。減感作療法といって、原因となるアレルギー物質を少量から徐々に増やしながら体に入れていくことにより慣れさせてアレルギーを抑えていく治療を行わないのであれば、アレルギーを特定する検査は治療方法に影響を与えることは少ないと考えています(翠皮フ科・アレルギー科では減感作療法は行っておりません)。非特異的IgE検査や血液の中の好酸球を計測するものに関しては、治療方法を選択する上で多少考慮することもあるかと思います。参考程度でも大まかな指標をお知りになりたい方には、特定のアレルギー物質の反応をみる採血検査は有効なものだと考えます。
◎ステロイドの注射はお勧め致しません。
翠皮フ科・アレルギー科に、「花粉症の治療でやっていますか?」と多数のお電話をいただきます。結論は、お勧めいたしません。ステロイドの筋肉注射の効果は確かにあって通院回数も少なければあたかも魔法の薬みたいになっています。しかし副作用が絶対に起きないわけではありません。ステロイドの全身投与ですので、飲み薬と同じように血圧が高くなったり、糖尿病になりやすくなったり、骨がもろくなったり、全身の感染症にかかりやすくなったりすることがあります。副作用が出現したときに、飲み薬ならばすぐに中止して悪化を防ぐことができる場合もありますが、筋肉注射ではお薬を取り除くことができません。効果と副作用のバランスを考えると決してお勧めできる治療法ではありません。他の病気では筋肉注射を行うことはありますが、効果と副作用のバランスを考えた上で実施いたします。花粉症では、ステロイドの筋肉注射をしなくても十分に効果のある治療を行えますし、どうしてもそれで効果ができないならステロイドの筋肉注射ではなく、コントロールできない時だけの一時的なステロイドの内服の方が副作用を少なくできます。通院がなかなかできないときでも注射は1か月に1回は必要ですので、同じくらいの期間の内服薬や点鼻薬、点眼薬を処方希望すれば宜しいことだと考えています。
◎アレルギーの薬が眠くなってしまうという患者さんには、漢方薬がお勧めです。
治療は、抗アレルギー薬といわれる内服薬や、点鼻薬、点眼薬が一般的な治療法です。できれば症状が出る前に治療を開始することがお勧めです。点眼薬は抗アレルギー剤とステロイド剤のものがあります。ステロイド剤は症状が重いときに使用しますが、眼圧が上昇して緑内障のリスクが上がる可能性があるため、眼圧のフォローアップをきちんとする必要があります。翠皮フ科・アレルギー科では、抗アレルギー剤の点眼薬は処方させて頂きますが、それでも症状のコントロールが厳しいときは眼科の受診をお勧めしています。抗アレルギー剤の目薬でも、目にしみるものとそうでないものがあります。目にしみるものは、現在のアレルギーの程度によってしみかたが異なるので、状態を知るバロメーターとして利用できることもあります。目にしみるものが嫌な方はしみないタイプを選択されると良いと考えます。
抗アレルギー薬の内服は、まれに眠くなってしまう方がいます。100人の内服患者さんがいたら5人もいないですが、やはり該当してしまうと辛いものです。翠皮フ科・アレルギー科では、9種類の抗アレルギー剤を患者さんの年齢や生活習慣、症状に応じて使い分けています。できる限り眠くならないように選択をしています。どうしても眠くなってしまう患者さんや御希望の方には、
漢方薬による治療も行っています。漢方薬は眠くなる心配がありません。漢方薬と聞くと効果が出るまでに時間がかかるとお考えの方もいますが、花粉症やアレルギー性鼻炎に使う漢方薬は、普通の西洋薬と同じように効果が出ます。
◎西洋薬と漢方薬の組み合わせもできます。
西洋薬で比較的新しいタイプ(といっても10年以上の歴史のあるものばかりですが)は、2種類を同時に使うことは保険診療では認められていません。それだけで不十分のときには、それよりも古い抗アレルギーの西洋薬を組み合わせることが多いです。しかしそれでは高率に眠気が出てしまい、とても不自由です。セレスタミンなどステロイドの入った内服薬で治療をすることもありますが、それではいろいろな副作用の懸念があります。普段は西洋薬を1種類内服していただき、ひどいときには漢方薬を併用する方法や、その逆で使用することもとても便利な治療法だと考えています。次に述べる点鼻薬もとても効果的です。
◎1日1回の点鼻薬がかなり良い効果を発揮致します。
点鼻薬も以前は噴霧後の液だれがいやだということで抵抗のある患者さんもいましたが、2009年6月に、アラミスト(薬品名フルチカゾンフランカルボン酸エステル)が販売され、1日1回の点鼻で強い効果を出せるようになりました。今までの点鼻薬の効果よりもかなり強力です。アラミストという名前は、アレルギーに効果のある液だれのしにくいミスト(霧状)のお薬ということで名づけられたそうです。
アラミストが使える患者さんには、まず点鼻をしていただき、効果が不十分なら抗アレルギー薬や漢方薬の内服や点眼薬を追加するのが生活の質を落とさずに花粉症を乗り切ることができるのではないかと考えています。
◎薬物治療をするだけでなく、日常生活の見直しも大切な治療の一つです。
近年の研究では、アレルギー性鼻炎や花粉症に、
緑茶やヨーグルトの摂取が症状の抑制に効果があるということが分かってきています。しかしこれはシーズンが始まるかなり前から続けていくことが大切です。また寝不足もアレルギー性鼻炎や
アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を悪化させることも経験的に分かっています。日頃からの体調管理もすることが重要です。
アレルギー体質ですが、一度アレルギーになったら治らないということではないと思います。それは急に花粉症などのアレルギーが出る人もいれば、食物アレルギーなど徐々に改善していく方もおられることから「アレルギーの体質は変わる」と言えるのではないでしょうか。状況は変えることができる可能性があると思っていますが、そのためにはまずは時間をかけてでも体調を整えていくことがとても大切なのだと感じています。
花粉症のお薬を使った治療もいろいろな手段がありますし、その患者さんにあった望ましい治療法を検討させていただきます。
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