翠(みどり)皮フ科・アレルギー科

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アトピー性皮膚炎について

◎アトピー性皮膚炎は、乾燥とアレルギーによって起きる皮膚炎です。
 アトピー性皮膚炎は、アトピー体質の人がアレルギーやお肌のバリアが足りないことによって湿疹を起こす病気です。アトピー体質を定義することは私にとっては非常な難しいことだと考えていますが、簡単に申し上げるとアレルギー体質の一つと考えています。
 アトピー性皮膚炎は小さい子供の場合は小学校卒業までにかなり改善する人が多いです。ただ最近は改善しても大人になってから就職などのストレスで再発したり、子供の頃はアトピー性皮膚炎はなかったのに大人になってから初めてなるケースも増えてきています。
 太平洋戦争に日本が負けた当初は花粉症やアトピー性皮膚炎の子供は皆無でした。しかし高度経済成長やその後の裕福なバブル経済期には患者数は徐々に増えていき、今では珍しくない病気になってしまいました。同じことがアフリカでもおこっているという報告もあります。アトピー性皮膚炎は体質が大きな要因だと考えていますが、戦後から比べると増えている現実を見ますと、体質だけでなく環境による要因も含めて考えないといけないということが分かります。アトピー性皮膚炎の原因として大きく分類すると、お肌のバリアの異常を中心とした体質による原因アレルギーによる原因環境による原因の3つに分けられることができるのではないかと考えています。

◎アトピー性皮膚炎のタイプとして外因性と内因性があります。
 アトピー性皮膚炎を大きく分けて考えると2つに分けて考えることができます。外からの物質が原因でアレルギーがおきるもの(外因性)と体内の状態が原因でアレルギーが起きるもの(内因性)です。外因性には、IgEを介する即時型アレルギーと好酸球やTリンパ球が関与する遅発型アレルギーに分けて考えることもできます。また内因性と外因性の混合型も考えられます。

◎アトピー性皮膚炎の治療は大きく3つに分けられます。
1.今起きている湿疹などの症状の改善すること
2.皮膚のバリアをきちんと維持できるようなスキンケア
3.環境などの外的要因の除去すること
 これらがほぼ完璧にできるならおそらくアトピー性皮膚炎を沈静化することは可能だと思います。しかしながらなかなかコントロールが難しい人がいるのも事実です。特に3番目の外的要因の除去を完全にすることはかなり難しいと思います。

◎まずは現在の症状を改善させていきましょう。
 そうは言いつつも治療はしていかないと良くなりません。まずは今起きている湿疹を治療する事が、なりよりも優先度が高くなります。治療はステロイド軟膏や免疫抑制剤の外用、ひどいときはこれらの飲み薬を使用していく場合もございます。補助療法として抗アレルギー剤の内服もとても手助けになる場合がございます。ステロイドが怖いと思われる方もいるとは思いますが、要は使い方次第ではないでしょうか。
 患者さんの中には皮膚の病気は他人の視線も気になったりするかもしれません。それによって内向きな状態になってしまうのではないかということも考えられます。皮膚の治療がうまくいけば、生活も前向きに考えてもらえるのではないかと考えております。そのために少し強力であっても短期間に治療することも悪くはないのではと思っています。しかし、強力な治療をずっと使うことは、副作用の観点からも決しておすすめできません。心も体も早く良くなって、体の中の歯車を順調な方向に回していけるお手伝いができたらうれしく思います。

◎スキンケアもとても大切です。
 外因性アトピー性皮膚炎の患者さんは、フィラグリンというお肌のバリアを作る物質に異常があることが遺伝子レベルで分かっています。もしかしたらさらに原因があることが考えられますが、今はこれが判明しています。中からはお肌のバリアを改善させることは難しいです。そのためにスキンケアも保湿剤を使用してお肌のバリアで足りないところを補ってあげることがとても大切です。バリアがしっかりしていれば、外からのアレルギー物質の侵入をきちんと防ぐことができるからです。
 お肌の治療とスキンケアは同時にできます。お薬を混ぜてあげることで、重ね塗りという二度手間をなくすことが簡単にできます。お薬は最初は良くなるまでは根気強く何回も塗っていただき、改善が見られたら徐々に回数を減らし保湿剤によるスキンケア中心に移行できるようにしていくことが望ましいと考えています。

◎まずは回数を多めにお薬を塗っていきましょう。
 私たち皮膚科医の中でも専門家として有名な大学教授の医師たちは、塗り薬の塗る回数は強いステロイドなら1日2回で十分と話しています。私もこの意見は正しいと思いますが、これには条件があるのです。軟膏0.5gで両手の手のひら全体もしくは顔面全体に塗っていただくということです。目安として軟膏の5gのチューブを指先から第1関節まで出した量になります。塗っていただければ分かりますが、手ならベタベタし、顔ならテカるほどの量で日常生活に支障をきたす状態です。つまり実際の患者さんのお薬の塗る量はそれよりも少なくなります。このような理由で私は塗る回数を多くしていただくことを提唱させていただいております。

◎かゆいときに顔をたたいたりこすったりしてはいけません。きちんとお薬を塗りましょう。
 顔がかゆくてどうしようもないときに、絶対に顔をたたいたりこすったりしてはいけません。眼球への影響がとても大きく出てしまいます。たたいたりこすったりすることによって、白内障や網膜剥離(もうまくはくり)を起こすことが知られています。白内障は手術をすれば回復しますが、人工レンズを眼内に入れればピントの調整がうまくいかなくなります。生活は今まで以上に不便になると思われます。網膜剥離(もうまくはくり)は、最悪の場合は失明をしてしまいます。これらを防止するためにもかゆいからといって、顔をたたいたりこすったりするのはやめましょう。かゆいときには、しっかりとお薬を顔に塗ることが大切です。ステロイドの副作用によって、白内障や緑内障がありますが、目のまわりにお薬を塗ってもまったく危険性は変化しません。むしろアトピー性皮膚炎による白内障を防ぐことができます。ちなみにステロイドによって起こされる白内障とアトピー性皮膚炎による白内障はメカニズムが違いますので、鑑別が可能です。

◎原因除去は大切ですが、なかなか難しいです。
 環境などの外的要因の除去をするには原因がわからないとできません。しかしながらなかなか難しいこともあります。アレルギー検査の中でどの物質にアレルギー反応があるかを血液検査ですることもありますが、なかなか難しくあくまでも参考程度です。冒頭に書きましたが、アレルギーが起こるまでにはいくつかの経路(外因性、内因性、混合型)があり、体の中でどのような経路でアレルギーが起こされているのかを検査である程度類推することができます。
もし原因が生活の中でわかるのであればその除去をすることをお勧めいたします。ただストレスそのものもアトピー性皮膚炎の悪化を招きますので、厳しく考えずにバランスよくすることが大切です。原因を見つける方法として、日記をつけていくことをお勧め致します。

 こちらに症状日記のひな型のサンプルと書き方のサンプルをお示し致します。ダウンロードして使用してください。ご自身で必要だと思われる項目があれば加えてください。

 症状日記        症状日記の書き方サンプル

◎食生活や生活習慣も見直すことが治療の一つになります。
 原因がわからないけど、食生活や生活習慣を見直すことによってアトピー性皮膚炎を改善させることもよくあるのも事実です。試してみて改善するようなら続けていくことをお勧めいたします。体調を整えるという意味において、漢方薬は良い効果を発揮いたします。特に内因性のアトピー性皮膚炎の場合は、従来の治療だけではなかなか難しいことも多く、漢方薬を加えてあげるだけで改善の方向をさらに早くしてあげることもできると考えています。治療に難渋している方で、漢方薬を使ってみたいと考えておられる方はご相談ください。ひどいときにはステロイドの塗り薬をつかいながら、漢方薬も併用して次第にステロイドの塗り薬を減らしていけるようにするのが、最短の治療法だと思います。

◎ストレスのたまっているお子さんには、ご両親も一緒に治療をおすすめします。
 お子さんがストレスがたまって、わけもなく体をひっかいていることはありませんか。例として、自分の下に弟や妹ができて、ご両親はそちらの育児の方が忙しくて上のお子さんにあまりかまってあげられない時などです。お子さんにとってはストレスになって、かまってもらうためにひっかいてしまうこともあります。逆にご両親は、育児やお仕事が大変でとてもストレスを感じているのだと思います。さらにかまってもらいたいお子さんに対しても、年長なんだから少しくらい我慢してとストレスに感じていることはありませんか。子供のストレスは、実は親のストレスの鏡であることが多いです。子供がストレスがご両親の”SOS”のサインとしてみることが大切かもしれません。そのような時には、きちんとステロイド外用剤と保湿剤を体に何回も外用をして、ストレスを軽減させることができるような漢方薬を内服することが一番の近道だと考えています。またそのときにご両親にもストレスを軽減できるような漢方薬の内服を是非おすすめいたします。特にいろいろな治療を試してみても全然アトピー性皮膚炎が治らないお子さんをお持ちの方には是非おすすめしたいと考えております。

◎塗っているけどなかなか治らないという方には免疫を調節するお薬の内服が有効です。
 アトピー性皮膚炎の患者さんの一部の方は、かなりの重症の方がおられます。そういう方は、塗り薬をメインとしてアレルギーのお薬や漢方薬の内服の併用治療だけではどうしてもコントロールができない患者さんもゼロではありません。ステロイドの内服が必要だと考えられる患者さんもいます。ただどうしても全身の副作用とのバランスを考えると、ステロイドの内服には抵抗があるという医師や患者さんがいるのも事実です。ステロイドの内服には医療者サイドでも躊躇することがあります。現在は、ステロイドとは異なる免疫を調整するお薬も保険で使用できます。副作用はゼロではありませんが、採血や血圧などきちんと計測していくことによって安全に使用することができます。ネオーラルという免疫を調整する薬は、どうしてもかゆみがコントロールできない患者さんにとてもよく効くことがあります。漢方薬も併用して使用することもできます。塗るだけでは治療が難しい方は、一度ご相談ください。

◎アトピー性皮膚炎は本当に治るのでしょうか?
 子供のアトピー性皮膚炎は、成長にしたがって症状が改善していくことが多いです。残念ながらすべてのアトピー性皮膚炎の子供がそうなるわけではありません。症状が残ったまま大人になってしまう方や、一度症状が全く出なくなったのに大人になって再発をしてしまう方、子供のころには全くなかったのに、大人になってからアトピー性皮膚炎を初めて発症する方もおられます。アトピー性皮膚炎の原因は、お肌のバリアの異常を中心とした体質による原因、アレルギーによる原因、環境による原因の3つに分けられることができるのではないかと最初に述べました。この3つが改善できればアトピー性皮膚炎は治せると考えています。しかし現在の医療で、遺伝子の違いに伴うお肌のバリアの異常を根本的に治療をすることは困難です。しかしスキンケアをコツコツ行うことによって、正常の皮膚と同じ状態にしていくことは可能だと思います。あとはアレルギー体質ですが、一度アレルギーになったら治らないということではないと思います。それは急に食べ物にアレルギーが出る人もいれば、徐々に改善していく方もおられます。状況は変えることができる可能性があると思います。環境による原因は、職業や住居環境など変更するにはとても高いハードルを乗り越えないといけない場合もありますが、絶対に変えられないということではないと思います。状況によってはとても難しいことかもしれませんが、お肌の体質は普段からのフォローで、アレルギーや生活環境については、どうにか変えることができればアトピー性皮膚炎とさよならできる可能性があると考えています。最初から治癒を目指すのではなく、まずは現在の症状をきちんとコントロールできる状況を考えていきましょう。

◎アトピー性皮膚炎で気をつけて頂きたいことをお示しいたします。
1.乳製品(牛乳・バター・チーズなどが入っている食品)や卵製品を可能な限り除去する。
 大人のひどいアトピー性皮膚炎の場合、乳製品や卵製品による悪化も見られることがあります。かなり多くの食品に入っているのでなかなか厳しいと思いますが、和食中心の食事に変更することで十分に対応可能だと思います。乳製品でもヨーグルトは摂取可能だと考えます(食べて悪化するような人はお勧めしません)。近年の研究では、ヨーグルトの摂取がアレルギーの病気の症状を抑えることが分かっています。卵製品は、鶏の卵だけではなく、魚卵なども避けておくとよいと考えます。

2.コーヒー、チョコレート、ココア、ピーナッツなどの豆製品もできるだけ避ける。
 コーヒーやチョコレート、ココアでアトピー性皮膚炎が悪化させている症例が見られます。これらを除去するとアトピー性皮膚炎が軽快したという報告もあります。できることなら母乳を与えている母親も、本人も避けることが望ましいです。

3.脂っぽい食事を控える。肉より魚を摂取する。赤身魚より白身魚のほうが良い。大豆アレルギーがなければ大豆によるタンパク質摂取が望ましい。さっぱりとした和食を中心にしていく。スナック菓子は控える。
 食生活の乱れがアトピー性皮膚炎の原因の一つかもしれません。飽食の時代でも、質素な食事を心がけていくと改善が期待できる場合があります。質素な食事でも工夫次第ではおいしく召し上がることができます。脂は酸化するとたんぱく質と結合してアレルギーを起こしやすくなりますので、新鮮なものを摂取しましょう。できれば素食をお勧めします。また魚は古くなるとかゆみのもとになるヒスタミンを多く含んだりするので新鮮なものを摂取してください。生しょうゆや味噌汁で悪化する場合大豆もアレルギーのことがあるのでそういう時は大豆は避けてください。

4.あくの強い野菜やトマトは控える。イカ・タコ・エビもお勧めしません。お米はうるち米を摂取し、もち米は避ける。
 タケノコ、里芋、山芋、山菜などのあくの強い野菜はかゆみを増すので控えましょう。水煮などあくを抜いてあっても同様です。トマトはかゆみの成分の元が多く含まれているので摂取は控えたほうが良いと思います。アレルギーが比較的多い、イカ・タコ・エビなども控えた方がいいでしょう。もち米も摂取しないで、普通のうるち米を摂取してください。おせんべいや赤飯、おこわは食べない方がいいです。山菜おこわは絶対に避けてください。

5.母乳を与えているときには、お母さんの食事にも気をつかう。
 母乳中には、お母さんの摂取した食べ物がすべて移行していると考えてください。上記のことをお母さんも考えながら食事をしてください。

6.体を洗うときは、垢すりを使わずに手だけで洗うようにする。
 これは、アトピー性皮膚炎患者に限らず、すべての人に言えることです。お肌は擦れば擦るほど老化が進みます。タオルなどを用いずに、手だけでさっと洗うのがベストです。体の洗い方に詳しく書いてあります。参考にしてください。

7.ボディソープを使わずに、固形石鹸を使用して体を洗う。液体石鹸でも石鹸素地だけのものを使用する。
 ボディソープの界面活性剤や香料でアトピー性皮膚炎が悪化する方がいます。安いただの固形石鹸でタオルを使わずに手で洗うだけでも十分に汚れは落ちます。液体石鹸でも、石鹸素地のものだけも販売されています。冬ならば体は何もつけずに手で洗うだけでも十分のことも多いです。

8.お風呂に入らず極力シャワーにする。
 お風呂で温まるとかゆみが増します。シャワーですごせるならその方が良いと考えます。シャワーも強めにしないで、穏やかに流して下さい。

9.洗濯物は、合成洗剤ではなく、昔ながらの石鹸洗剤を使う。柔軟剤にも注意。
 ボディソープと同じく、界面活性剤や香料の影響が大きい場合があります。いろいろ洗剤がありますので、お肌にあった洗剤をみつけてあげることが大切です。実生活の中でもなかなか気付きにくい盲点になりがちですが、とても大切です。柔軟剤も香料が強いものは悪化させる原因になります。洗剤はシャボン玉石けんの洗濯用石けんやミヨシ石鹸の無添加せっけんの洗濯用、ライオンのケアベールがお勧めです。柔軟剤もライオンのケアベールがお勧めです。
 甘い匂いでとても人気のある海外の柔軟剤は、とてもいい匂いで個人的にも悪いものではないとは思いますが、アトピー性皮膚炎の方には残念ながらあまりお勧めできません。

10.寝不足にならないように体調管理をする。
 睡眠はアレルギーの病気ではとても大切です。睡眠不足はアトピー性皮膚炎や、花粉症・アレルギー性鼻炎、喘息などのアレルギー性病気を悪化させる大きな原因となります。睡眠を改善するだけでも症状は改善できることもあります。

 一般的なアトピー性皮膚炎の解説が、アトピー性皮膚炎ドットコムにあります。参考になると思います。しかしながらここに書いてあることは、あくまでも世の中の標準的な治療としての説明であって、これだけでアトピー性皮膚炎の治療ができるわけではないということをご理解の上で参考になさってください。

◎アトピー性皮膚炎の症状の程度を血液検査で知ることができます。
 昔は血液検査でもアトピー性皮膚炎の症状の状態を数字で見ることは難しかったのですが、今はTARCという検査を用いて見た目だけではなく、数値で外因性のアトピー性皮膚炎を評価できるようになりました。実際私たち皮膚科医はTARCを計測しなくてもお肌を見れば改善しているか分かるのでほとんど計測しません。しかしながらアトピー性皮膚炎の状態を数字で理解して良くなっていることを確認したいと言う方には良いのではと考えています。ご希望の方はおっしゃってください。

 少し長い説明になりましたが、お悩みの方はご相談ください。

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